(6)坂すべり 〜みんなでシュー!〜 | ||||||||
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(1)巨大すべり台登場 「先生一緒にやってよ。」と、言うように手を引っ張るマーくん。ふだん要求を出すことが少なく、集団参加があまり好きではないマーくんが、ニコニコ笑顔で先生の手を引っ張って友だちの中に入って行きます。彼の気持ちをこれだけ引き付ける物、それは“巨大な坂”。幅270cm長さが360cmで、3分割合体式。現在使っている“巨大な坂”は、3代目。私たちの手作りの坂です。 初代の坂は、巧技台の棒で骨組みを作り、その上にベニヤ板を載せ、さらにマットと段ボールを敷いたものでした。それを体育館に設置してある大きなトランポリンの枠に固定して、“巨大な坂”にしたのです。この初代の坂が生まれた背景には、「ふだん遊んでいるすべり台をみんなで一緒にできたらおもしろいね。」「一緒に滑っている友だちの様子を見ながら滑るのって、いつものすべり台と違った感じかもしれない。」
2代目は、他校との交流会で“坂すべり”をすることになり、「子どもの数を考えると、もう一台ほしいね。」と、かなり急いで作ったものでした。急いだだけあって、肋木に掛ける形で、材料は間に合わせの廃材を利用した物。しかもベニヤ板6枚を使った一体物にしてしまったため、収納場所と強度に難があり、すぐに壊すことになってしまいました。 ネバーギブアップ! バージョンアップ!! これであきらめる?いいえ、私たちは知ってしまったのです。坂を二つ合体させたダイナミックさと楽しさを。そして、その年の夏休みにこのダイナミックさと楽しさを求める5人の有志が学校に集結し、3代目の坂の製作に取り組んだのです。 2代目の失敗を生かし、材料は学校の自主教材費で、しっかりした10cm角の角材とベニヤ板を購入してもらいました。そして、収納や移動を考えて、3分割合体式で製作することにしました。「こんな形で枠を組めば良いんじゃない。」「ここの固定はボルトが良いね。」「ボルトを少し延ばして、土台にかかるようにしたら良いんじゃない。」5人でアイディアを出し合いながら、それを形にして行きました。こんなやり取りがとても楽しいのです。さらに、仲間が集まって共同で一つの大きな物を作る楽しさもありました。
(2)みんな一緒だから楽しいんだね! ミッちゃんもタクちゃんもミナちゃんも、みんな坂すべりが大好き。積極的に何度も何度も滑りに行きます。その様子をいつも見ていた、心優しき担任は、「こんなに好きなら、集会の後にクラスの子どもたちだけで、思いきり滑らせてあげよう。」と考えました。 そして、計画実行。クラスの子どもたち6人を体育館に残して、「さあ、みんな思いきり滑っていいよ〜っ!」と、張り切って声を掛けました。坂すべりが大好きな子どもたちは、先を争うように滑り始めます。ところが、この後担任も信じられない光景が目の前に展開されることに・・・。 集会では、あんなに積極的に楽しんでいたはずのミッちゃんもタクちゃんもミナちゃんも、1〜2回滑ってやめてしまったのです。ほかの子どもも3人に続くように滑るのをやめて、床に座り込んでいます。この様子を見て担任は実感しました。「子どもたちは大きな集団の楽しい雰囲気を感じながら動いていたんだ。」と。 そうなのです。集会の中では、大集団の子どもたちの声などが相乗効果になって、楽しい雰囲気を作り出しているのですね。だから、その楽しい雰囲気に乗って、自分も楽しむことができる。これは、集会という大集団ならではの効果なのでしょう。みんな一緒だから楽しいんですね。 (3)いざ、坂すべりの国へ出発! 坂すべりシリーズの集会をするうちに、「もっとはっきりした場面転換をしたいね。大掛かりな内容だけに空間が一変すれば、子どもたちもハッとするはず。」こんな発想が出てきました。でも、どうしたらそんなことができるのか。みんなが頭を痛めていた時、「別世界に飛んで行っちゃえば」と、冗談なのか本気なのか分からないような言葉が。ところがこの冗談のような言葉が、発想のひらめきに結び付いてしまったのです。
飛行機のコックピットの計器類→コックピットから見た離陸の瞬間→飛行機の中から見下ろす流れる風景→飛行機がロケットに変わって宇宙に飛び出す、このようにしっかり流れを持った物になりました。音入れにもこだわりました。ミキサーを使って実際の飛行機の音と音楽を重ねたりつないだりして、迫力ある物になりました。機器に明るい教員が、この製作役を買って出てくれました。餅は餅屋。自分の持っている力の出し所を知っているのが、この教師集団のいいところ。それぞれが得意な分野で力を発揮し、それが結集した形が集会なのです。 乗物に乗って
(4)坂すべりいろいろ 今までにいろいろな“坂すべり”が登場しました。1台目の坂と3台目の坂を縦に並べた“連続坂すべり”。トランポリンをステージに上げて、より高さを追求した“ちょっぴり怖〜い坂すべり”。校舎の外階段を使って、3分割の坂を縦につないだ“長〜い坂すべり”。雪遊びと合体した“雪中坂すべり”。 さらに、集会以外にも登場しました。卒業式で、卒業生が一人ずつ坂を滑っての入場。文化祭の小学部企画(遊びコーナー)で、教室の中に“長〜い坂すべり”が登場。この時は、跳び箱などで土台を組んで、作ります。土台の組み方は、写真に撮って記録に残し、次に同じような使い方をする時、準備がスムーズに進むようにしています。 このように基本形の“坂すべり”が確立すると、それを応用した発想が次々に生まれてきます。そして、“坂すべり”が変化し発展する。このことが、子どもたちにも教員にも良い刺激になっているようです。 |
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