(5)雪あそび 〜ようこそ白銀の世界へ〜 | ||||
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(1)体育館が一面の銀世界に! はらはらと雪が舞う様子を見るたびに思います。「ああっ、雪ってきれいだな〜。幻想的だな〜。」年に数回しか雪を見ることのない私たちだから思うことかも知れません。そして、「こんなきれいな幻想的な世界を作り出して、子どもたちに体験してもらいたい。」そんな思いが高じて登場してしまったのです。な、な、なんと雪の世界が・・・。 体育館が一面の銀世界に!なったような気がした私たち。雪は雑誌を細かく切った紙。体育館のフロアー全面を覆い尽くすほど大量の雪。大量の雪を作るためには、どうするか。ハサミを使ったり、手で千切ったりと、いろいろ試した結果“裁断機を使って雑誌を切る”これが一番だと分かりました。 方法が見つかれば、後は行動あるのみ。雑誌を持ち寄り、みんなで協力しての雪作り。校内にある裁断機を全部使って、ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ。裁断機で雑誌を切るのって、案外力が必要なのです。だから次々に交替して、ザクッ、ザクッ。だけど、みんなとっても楽しそう。「子どもたちどんな顔するかな。」「ヨッちゃんなんか、きっとこの感触好きだよ。」そんな会話が絶えませんでした。 子どもたちの行動や表情を期待して、想像するのが楽しかった。だからみんなで労力を惜しまずに、自分の仕事の手が空くと、誰からともなく裁断機がおいてある部屋に集まり、何日も作業を続けることができたのです。 雪はどうやって舞わせるか 集会の内容もいろいろ検討しました。「雪に埋もれたり触ったりする感触的なものだけじゃつまんないよね。」「はらはら雪が舞う視覚的な変化が出せないかな。」「吹雪みたいな雰囲気が出せるといいよね。」「風を起こせばいいんだから送風機が使えそうだよ。」 思いついたらすぐに実験です。体育館のフロアーに雪を撒き、送風機のスイッチON。しかし、期待したほどの効果はなし。「これを使えば子どもたちの真上に雪が降るよ。」持ってきたのは雨といの筒。送風機にガムテープで雨といを固定し、体育館のギャラリーに設置して実験。 しかし、はらはらと雪は舞うが、量が少なすぎて子どもたちが注目できそうもない。「プレイバルーンを使ってみたら」(プレイバルーンとはパラシュート生地の大きな丸い布。教員6人くらいでその布の端を持って上下させると、周りに風が起こります。中に空気を溜めると大きなドームになり、その中に子どもたちが入って不思議な空間を楽しんだりします。)実験してみると、雪が風に飛ばされて雰囲気はいい感じ。とりあえず集会で使ってみることになりました。 ところが、使ってみると、大きな欠陥があることに気づきました。布に起きる静電気で、雪がみんなくっついてしまうのです。
やってみなくちゃわからない 雪あそびの集会をして行くうちに、素材の雪その物の問題が出てきました。顔などに当たって痛く感じるものが混ざっているのです。よ〜く見てみると、それは女性雑誌を切ったもの。「どうも雪の素材には『少年○○』が、適しているようだ」と、いうことが分かりました。 それが分かって雪の作り直しです。細かく切った雑誌が混ざり合っているので、女性雑誌の分を取り除くことができないのです。さらに、雪と共に舞いあがるほこりも気になってきました。このほこりの正体は、紙から出る細かい繊維。しかし、正体が分かってもこの問題はなかなか解決できません。代わりの素材がすぐには見つからないのです。「問題があっても子どもたちは楽しみにしているし・・・」と、悩みながらも雪あそびを続けて3年目。
こうした事前の教材準備をとても大切にしてきました。見立てる力がそれほどない子どもたちだから、ウソっぽい間に合わせの物だと興味も持てずに素通りしてしまいます。これだけの準備があるから、子どもたちは心動かされ、その気になってやろうとするのではないでしょうか。また、教員が準備不足で不安な気持ちがあれば、すぐに子どもたちに伝わります。そのことが、子どもたちの活動を引き出す妨げにもなってしまうのです。だからこそ、私たちは放課後に一生懸命教材研究に励むのです。 (2)思わず体が動いちゃう! 集会は、とっても大掛かりな設定が多くなります。その中でも、特に雪あそびは大掛かり。大変だけど頑張って準備してしまう。それには理由があるのです。 私たちは、「本物ではないけれど、その中で子どもたちに疑似体験してほしい。」そんな思いを大事にしています。疑似体験するためには、それだけ本物に近づける必要があります。そして、よりはっきり伝えたい、より臨場感を伝えたいという思いが膨らんできます。それには、視野に入る空間全体を演出しなければなりません。体育館のフロアーの一部にしか雪がなかったら、きっと子どもたちには、いつもと同じ空間として映ってしまうでしょう。視野に広がる空間全体が別世界になっているからこそ、その世界に引き込まれ、その気になって、活動が生まれるのです。 イメージの持てる子どもたちには、よりイメージが膨らみ、イメージの持ちにくい子どもたちには「あっ、こんなものがあるんだ」と、発見があって自分でやってみたくなる。そんな世界を大事にしているのです。 心の模倣 大事にしているのは、大掛かりな設定ばかりではありません。雰囲気作りも重要です。雰囲気作りの一つに教員がその世界に入り込んで、一緒に楽しむということがあります。 子どもたちが『模倣する』ということは、形だけではなく、感性や人格も真似ることだそうです。教員が「なんだつまらない。作り物じゃないか。」そんな冷めた気持ちでいたら、子どもたちはきっと動き出そうとはしないでしょう。子どもたちは、教員の心まで模倣しているのです。 だからこそ一緒にその雰囲気の中に入り込み、楽しむことがとても大切なことであり、子どもたちの本当の意味での模倣の力を培うことにもなるのです。また、こうした雰囲気があるからこそイメージが持ちにくく、感触遊びが嫌いな子でも「楽しそうだぞ。やってみようかな。」という気持ちになるのです。 |
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