妹の運動靴をなくした兄の償い
妹の大事な運動靴をなくしてしまった兄が、替わりの靴を手に入れるために全力を尽くす。ただそれだけの話なのに、スクリーンにクギづけ。この兄妹を演じる子役二人が素晴らしい。靴がなくなったと知って泣く妹。それを見て兄も涙をポロポロ。子供ならではの真摯さと一途さがほほ笑ましく、思わず駈けよってこの二人を抱きしめたくなる。
兄妹の家は貧しく、子供たちはそれぞれ1足の運動靴しか与えられていない。兄のアリは、修理して貰ったばかりの妹ザーラの運動靴をうっかりなくしてしまう。親には打ち明けられず、ふたりは1足の運動靴を共有することを決める。妹がまずアリの運動靴を履いて登校。下校途中で待ちあわせて、今度はアリが履いて登校するという具合だ。
しかしザーラは兄の靴が気に入らない。どう見ても男の子用だし、ぶかぶかなので溝に落としてしまったり。ぐずる妹を見て、アリは替わりの靴をなんとしても手に入れなければと決意する。その苦心奮闘ぶりがクライマックスを盛り上げる。
イランの小学校は、午前中だけ通う生徒と午後だけ通う生徒に分けられているという。映画では妹は午前だけ、兄は午後だけ登校する様子が描かれる。ザーラは甘えん坊で泣き虫。アリも泣き虫だが、妹には優しい。成績がよいから、と先生からご褒美として貰った金色のペンも、妹の機嫌を直すためにあっさりあげてしまう。この兄妹愛がポカポカと温かい。
緩急のあるリズミカルな展開で、カメラは子供たちの表情を丹念に追う。セリフを最小限に抑えた脚本も余韻があっていい。

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