(1)バルーンあそび 〜空とぶバルーン〜
大きな 大きな まるい布
     バルーンは いったいなんだろう
  おおきな魚になって
         食べられちゃった
  大きなおうちで
       あったかい歌をきいたよ
さびしがりやの友だちになって
      「いっしょにあそぼ!」って
                  やってきた
 バルーンが空にとびだせば
         夢もいっぱいひろがるよ



(1)バルーンちゃんて、な〜に?
 ニコニコ笑ってバルーンちゃんに寄って行くリョウくん。そんな様子を見て、教員はびっくり。いつもはどんなものを提示しても注目することが難しいリョウくん。バルーンちゃんには釘づけ状態。
 バルーンちゃんは、子どもが自ら感じて、思わず動いてしまう。そんな不思議さと楽しさに満ちた、魅力一杯のキャラクターなのです。

不思議な不思議な魔法の布
 時には風を起こし、時にはドームになってみんなを抱き込む。それがバルーン。バルーンは大きな丸いパラシュート布。5人くらいで端を持って上下にバフバフ動かすと、周囲に勢いよく風が吹き出します。 バフバフしながらゆっくり床まで降ろして、床と布のすき間をふさぐと、大きなドームに。ドームの中では上昇気流が起こっていて、中にいると髪の毛が逆立つほどです。そんな感じがまた、楽しい。ドームはかなり広く、小高グループの子どもたちと教員をいっぺんに呑み込んでしまうくらい。こんな不思議な魔法の布。それを使ったキャラクターが“バルーンちゃん”なのです。


空飛ぶバルーン
 当時のバルーンあそびは、中に入ったり、風を受けたりという単純なあそびでした。そこで、「何か変化を加えたい」と、考えるようになったのです。
 このシリーズの担当グループも、「バルーンを別の形で子どもたちに提示したい」という思いが強かったようです。そして、話し合いの中で最初に出された意見が「バルーンに顔をつけて人形にしたらどうか」だったのです。

 構想としては、体育館のギャラリーからギャラリーへロープを渡し、そこにバルーンを取り付ける。そして、両側のギャラリーをこのロープを持った人が移動すれば、バルーン人形に動きが出るというものでした。
 さらに、 「二つのバルーン人形を作って、子どもたちの前で人形たちがやり取りしたらきっと楽しいよ」「前後だけではなくて、左右にも動くとおもしろいね」と、画期的な案も飛び出して、さっそく実験。

 ところが、実際にバルーンをロープに吊り下げてみると、その重さにびっくり。二枚のバルーンを吊ってしまうと、小高グループの屈強な男の教員でもロープを持ち上げるのが精一杯で、移動することなどできなかったのです。
 結局バルーン人形を一体にして、その動きと声で子どもたちとのやり取りをすることにしました。動きの実験でも、思わぬ誤算が生じました。「ギャラリーの上でロープを持っている教員が、お互いに引っ張り合えば、バルーン人形が左右に動く。」と思っていたのですが、なかなか左右には動かずに上下に揺れるのです。思わぬ誤算でしたが、この上下の動きがおもしろいので、結果オーライ。こうして構想は具体化して行ったのです。

 基本構想が具体化すれば、あとは人形の製作。段ボールで大きな顔を作り、その下に服のようにバルーンを吊り下げるようにしました。段ボールの顔に洗濯挟みをたくさんぶら下げて、そこにバルーンを半分に畳んだ形で固定。下から引っ張れば、バルーンだけがはずれます。すぐにバルーンあそびができる仕掛けです。勿論、何度も失敗を繰り返しながら、ここまで行き着いたのですが・・・。
 こうして、工夫した仕掛けを装備したバルーンちゃんは、見事に体育館の中を気持ち良さそうに飛んだのです。


(2)空を見ろ!鳥だ、飛行機だ・・バルーンちゃんだ!!
見上げてごらん、バルーンちゃんを
 バルーンが目鼻が付いた人形になったことで、子どもたちの様子に変化が出て来ました。いつもうつむきがちの子が、バルーンちゃんの声に応えるように、それを見上げてバルーンに手を出しています。今までのバルーンよりも注目度が増して、自ら感じて、思わずからだが動いてしまっているのです。 また、ノリのいい子は、バルーンちゃんに向かって飛びついて行きます。子どもたちは、私たちの期待以上の反応を見せてくれたのです。
 私たちは、このような子どもたちの自発的な活動を期待して、バルーンちゃんを作りました。さらに、その登場の仕方や帰り方にもこだわりを持って、演出の工夫を加えたのです。特に帰り方は、次週の期待につながるように心掛けていました。
 バルーンちゃんは、バスケットゴールの裏に隠しておく。バルーンちゃんの声が「オーイ、みんな〜」と呼びかける。呼びかける声にみんなが「何だろう」と、思う。そこに「ぼくとあそぼうよ」と、登場して子どもたちの注目を引き出す。そして、「みんな〜、こっちだよ〜」と、子どもたちの頭上を飛び回る。バルーンを落として、バルーンあそびに突入する。

  バルーンあそびも、バルーンちゃんの声が子どもたちを先導し、「こっちだよ〜」と、呼びかける。ひとしきりバルーンあそびをしたら、顔の付いたバルーンちゃんに変身して「またあそぼうね〜、ばいばい」と、バスケットゴールの裏に姿を消す。こんな演出の工夫を加えて、展開して行ったのです。

 前述した子どもたちの様子は、バルーンちゃんそのものと、こうした演出の工夫との相乗効果の結果だったようです。


感じる子どもたちと感じる教員
 このシリーズに限らず、集会全体の取り組みの中で、「何だろう」「何が出てくるんだろう」「どうなるんだろう」と、ワクワクする気持ちを育てることを大切にして来ました。その手立てとして、キャラクターの存在や演出の工夫があるのです。
 
集会には必ずキャラクターが登場します。しかし、子どもを動かすために、キャラクターがあれこれ指示をする訳ではありません。キャラクターの演技から、子どもたちが雰囲気などさまざまなことを感じる。そして、自ら動き出す。それが、大切にしているキャラクターの役割なのです。

 また、演出の工夫から子どもたちに、分かりやすく雰囲気を伝える。それを感じ取ることで、子どもたちの活動に変化が見られるようになります。演出の工夫で、夢を持たせることも大切なことです。だからこそ、私たちは場面変換の方法などにもこだわっているのです。

 決して準備している様子を子どもたちに見せない。子どもたちが気が付いたときには、既に周囲の様子が一変している。そんなことも大切にしているのです。また、集会の終わらせ方を工夫して、次につながる期待感を持たせることが、子どもたちのワクワクにもつながって行くのです。

 こうしたことができるのは、キャラクターや演出の工夫からさまざまなことを感じる子どもたちがいる。そして、感じる子どもたちの様子からさらにいろいろなことを感じる教員がいるからなのです。お互いに感じ合いながら、さらにいいものが生まれてくるのです。お互いの働きかけが、変化や発展につながって行くのです。


(3)いろいろ応用してま〜す(バルーンちゃんはサンタさん)
 私たちは、一つのものができあがると、いろいろな機会に「前にやった○○を改良すれば、これに使えるかもしれない」と、その応用を考えます。こんなところは、とっても貪欲な私たち。もちろん全く新しいものも模索しますが・・・。             
 集会のバルーンちゃんも、いろいろな機会にいろいろなキャラクターで登場しました。
 集会の中でもバルーンちゃんの仕掛けを使って、大きく華麗な蝶ちょを登場させました。大きな魚になったこともありました。また、クリスマス会のときには、バルーンの代わりに赤い布を着せて、巨大なサンタクロースが登場しました。

 一つのものが生まれると、そこからたくさんのバリエーションが広がるのです。

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