第1部 はじめの一歩 |
(9)養護学校って |
いろいろな発見をしながら、私の毎日もだんだんおもしろくなっていった。 すごしてみると、人の輪への緊張があるT君も入れ方もあるし、その中でも楽しみをみつけられるようにもなっていた。 ゴロッとしたいW君も、好きだからといってそのままにしていては何も変わらないし、そうしていたいわけじゃない。もっと楽しいものがあるけれど、それをキャッチするアンテナがちょっぴり低いのだということもわかった。 給食を機嫌よく食べなかったMちゃんも、こだわりや思い込みを解消することはそう簡単ではないこともよくわかったけれど、それでもまた少し変化がみえ嬉しかった。 何事も長期戦ではある。そこに行き着くまでの過程があって日々の小さな変化は、とても大きな喜びとなっていった。 子どもと真剣に向かい合う、毎日の積み重ねや働きかけがどれだけ大切かということがわかったし、子どもたちとの日々はおもしろかった。 この1年で子どもたちはたくさんのアンテナを貼っていったし、私のアンテナもしっかり伸びた気がする。子どもに育てられた?それもまたいい関係じゃないか、そう思える。 楽しいこといっぱいあるよやってみようよ、そこから君の世界は変わるんだ!世界を拡げていくことはそう簡単でないし、頑張らなければならない事がいっぱいあるように思える学校の生活・・・今はつらいことなのかも知れないけれど、それを乗り越えた時の喜びもある。 私がそうだったように。 そして、春がやってきた。みんなの顔が輝いている。それぞれの頑張りを力一杯発表して、笑顔で卒業していく。 養護学校は教科書で授業しているわけではないので、授業の内容も変化しやすいし、時にはすっかり風景が変わってしまうこともある。 特に人事異動というのは影響力がある。私たちも、三月の異動でS先生が去ればそれは雪男の「ウ−タン」との別れになり、O先生が去れば奇妙なダンスをする「コチョコチョ星人」との別れになった。 けれど、この本を手にした人たちから、新しい「ボンゴ」が生まれたらどんなに楽しいだろうか。「ウ−タン」や「コチョコチョ星人」も消えたのではなく新しい土地へ旅立ったわけだから・・・。そして、子どもが大好きな新しい友だちが増えていくかもしれない。 集会活動に参加した交流校の子どもたちの笑顔を思うと、障害児教育の枠を超えて、子どもが元気になるパワ−があったような気もする。 そんなわけで、始めは実践の紹介だけと思っていたが、進めるうちにその背景となる思いや考えもまとめようということになった。学ぶとか、遊びとか、成長とか、実践の中でつかみ取ってきた教育にかかわるいろいろなことをこの世界を知らない人にも伝えたい、そう思った。 子どもや実践の話はいつでも楽しく私たちの力の源となっている。共に実践し考える「仲間」との交流が広がり深まることは、大きな喜びなのだ。今この本がきっかけとなり、一人でも多くの人に話をきけたらどんなに楽しいだろうかと考える。今後、これがどういう形に発展していくのか、とても楽しみである。 「子どもたちの笑顔がさらに輝きますように」 |
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