(2)ボンゴさん 〜夏だ、海だ、ボンゴさん〜 | ||||||
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(1)「ボンゴさ〜ん、帰っちゃいや〜!」 泣きながら「帰っちゃいや〜!」と、叫んでいるセイコちゃん。彼女の視線の先には、手を振りながら去って行く“謎の男”が・・・。 ボンゴさんシリーズの集会最終回での出来事でした。この“謎の男”こそ子どもたちに愛されるボンゴさんなのです。 ボンゴさんは、歌から生まれたキャラクター。南の島から子どもたちに夏を運んできてくれる“心優しきおじさん”です。腰蓑一枚に身を包み、首には果物の飾りを下げて、顔には色鮮やかなメイク。子どもたちの夢の島、ボンゴ島への案内人です。 ボンゴさんが登場し、頭上にブルーシートの波が通り過ぎると体育館全体が一面の海に変わっています。海は何枚もつなぎあわせたブルーシート。その向こうにボンゴさんがいる島が見えます。ちょっぴりレトロなベンチャーズサウンドが聞こえてくると、子どもたちの気持ちは高まります。
海を泳ぎ切ると、そこでは楽しい宴が繰り広げられます。ボンゴさんと一緒に歌と踊りの大宴会。「みんなまた遊びに来てね〜!」のボンゴさんの誘い。子どもたちは「また来たいな〜!」「今度はどんな楽しいことがあるのかな〜!」と、次回への期待を胸に夢の世界から現実の世界に向かって泳ぐのです。 夢の世界? ボンゴさんシリーズは、集会だからこそ取り組める内容の象徴的な存在です。大掛かりな設定に加えて、海や波という自分が体験していることが、そのまま形を変えて出てくる。だから子どもたちはイメージが持ちやすいのです。イメージが持ちやすいからこそワーッと提示されたものを受け止めることができ、気持ちがそこに向かって行くのです。 「ライバルはディズニーランドだ」などと言いながら、私たちはせっせと夢の世界の構想を練ります。「どうしたら子どもに気づかれないように大道具のセッティングができるかな」「子どもが気づいたときに別の空間が広がっていたらワクワクするよね」「こんな素材を使ったらもっと本物らしくなるよ」このような構想段階での意見交換がとても楽しい時間で、どの先生も子どもたちの驚きや感動の顔を思い浮かべて生き生きしています。そして子どもが夢の世界を体験し、その体験を信じ切れるような演出を考えます。 ボンゴさんとの別れを悲しんだセイコちゃん。その年のボンゴシリーズが始まるころから「ボンゴさんは誰がやってるの。○○先生なの?」と、その正体に気づき始めていたのです。そこで、ボンゴさんを演じる先生は、セイコちゃんとの対決を決意しました。セイコちゃんの上を行く工夫をしようと考えたのです。そして、悩んだ末に考えたのが、いわゆる早変わりでした。 みんながボンゴさんに別れを告げて現実の世界に向かって泳ぎ出したら、隠れて素早く衣装を取り、メイクを落として、みんなと一緒に泳ぐという方法です。 セイコちゃんは自分の隣を泳いでいるボンゴさん役の先生を見て、不思議そうな、それでいてホッとしたような表情を浮かべていました。きっと夢の世界での体験を信じていたいという気持ちもあったのでしょう。結局この対決は、先生の勝ちに終わりました。 このように、ボンゴさんを演じる先生も自分にできる精一杯の努力をして、夢の世界を演出します。登場の方法に工夫をこらして、毎回場所を変えたり、ターザンロープを伝って降りてきたり、ステージの天井からザイルを垂らして降りてきたり。こうした努力が、子どもたちの期待を高め、気持ちを向けさせる効果につながっているのです。 (2)大きな波だよ。音まで出ちゃって、思わず万歳! 「もっと海の臨場感が出せないかな〜」ボンゴさんシリーズで、私たちが常々考えていたことでした。ブルーシートの海にもう一つ何か本物に近づくものが加われば、もっと子どもたちの期待も高まるのでは・・。そこで考えたのが“波”でした。子どもたちが波に飲み込まれるような演出ができれば、視覚的な色の変化が生まれ、臨場感も増して心を揺さぶることができる。
こうして誕生したのがブルーシートの“波”。このとき完成した波は、シートを2〜3枚つなぎあわせただけのものでした。その両端を持って走ると波ができます。シートが擦れ合うことで、ザザザザァーと波の音まで出ることを発見して、思わず万歳。予想もしなかった効果です。 しかし、これだけでは満足できませんでした。その頃学校にブルーシートが豊富にあった訳ではありません。他の目的でも使用するので、集会のたびにつなぎあわせ、終わると解体するという繰り返しでした。「波用のシートが欲しいよね。」「もっとつなげれば、子どもたちの背後から波が迫ってくる迫力が伝わるよね。」こんな声が聞かれるようになると、すぐに行動を起こす私たち。資金が豊富にある訳ではないので、「あの店は安かったよ。」「いやこっちの店の方が安いよ。」と、安い店を探し回ってシートの枚数も増やし、現在の大迫力の“波”へと発展したのです。 発想の転換を “波”ができるまでを振り返ってみると、私たち教員が常日頃から 「この素材は使えるかもしれない。」と、言う思いで物を見ていた事が分かります。だからこそ、そこから発想が生まれたり、逆に発想からすぐに素材に結び付けたりすることができたのでは・・・。日頃から「何かおもしろい素材はないかな」と、いう目で身の回りのものを眺めていると、こんなときに役に立つものです。そして、既製の物を既成の概念で使用するのではなかなか教材は生まれないような気がします。既成の概念を捨てることから始めたら、きっとすばらしい教材が生まれると思います。 (3)ワンパターンでは我慢できない 集会は、教員を3〜4人のグループに分けて、それぞれが一つのシリーズ(3〜4回)の企画立案を担当します。
ボンゴさんは、毎年定番のシリーズ。でもその内容は、年々発展しています。もちろん良い部分は引き継ぎながら、新しい内容を加えていくのです。 |
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