(7)荒馬踊り 〜みんなでラッセーラ!〜
      雄大な太鼓の響きに誘われて
               荒馬踊りの始まりだ

        ラッセーラー ラッセーラー
                     ラッセーラッセーラッセーラ
 
    大きくジャンプ 元気に走り
                  草原をかけぬけろ
  
      ほら トラくんも
                  みんなの踊りに誘われてやってきた
 


レッツ!ショータイム
 幕が開き、荒馬踊りのショータイム。お腹に響く太鼓の音にびっくりしたミホちゃんが、次には「あれ?あれ?」という顔。はっぴに荒馬をまとった先生たちが、力強く勇ましくラッセーラーのリズムに体を踊らせ登場です。その姿に、ノリちゃんもケンちゃんも口をあんぐりして釘づけです。

 等身大のキャラクターだから、ちょっと注目しにくいかもしれないね。でも、なんとか子どもたちの心を引きつけたい。そんな思いで練習を重ねた私たち。「かっこよく見せるにはね、リズムよく、高く、そして足運びの切れ味よくだよ。」というアドバイスをうけて練習してきました。

 正直いってひと踊りすると、息が切れました。やってみると、見ている以上にハードでした。「こういうのは若者にまかせるよー」と言っていた先生もいましたが、「でも、カッちゃんたちに、かっこいいところ見せたいよ。」とはりきりました。みんな子どものことになると頑張っちゃうんですね。「体制もあるけれど、できるだけ人数をそろえてみよう。複数になると壮観だよ。」あくまでも導入部分ですから本当に短い時間です。それでも、「ここでは子どもたちのそばにいってアプローチしてみよう。」と隊形を変えるなど、振り付けをしたのです。


リズムは体で感じるんだよ
 これまでの発想にはない題材。それが「民舞」でした。
 新しいジャンルへの挑戦です。どうもなれていない私たちは、“踊り”というと決まった形があって・・というイメージがありました。でも、車椅子のナオくんや目の見えないミッくんも楽しめて自分から動きたくなるようなもの、みんなが楽しめるものにするにはどうしたらいいのだろうか、と話すうちに「そう、これはリズムを感じることが大切なんだ。」「感じたリズムをそれぞれが体いっぱい使って動いてみればいいんだ。」ということにたどりつきました。また、もっと活動の幅を拡げて楽しめるようにと、一緒に活動するキャラクターを加えることにし、リズムのいい荒馬踊りに虎舞いを加えることにしました。

 その日から太鼓や踊り練習が始まりました。虎づくりも始まりました。虎の顔は、発泡スチロールの箱を土台にして削って作りました。その体は布製3m。全形はちょうど獅子舞いの獅子のようなイメージです。これなら一人で充分動かすことができます。実は、顔の造作は他グループの先生にお願いしました。グループを越えての仕事ですが快く引き受けてくれ、それはとてもありがたく嬉しいことでした。こういう出来事は、人のつながりの大切さをしみじみ感じる時でもあります。

 さて、問題の太鼓です。なにしろ初めてのことで、リズム取りになかなか苦労はありました。でも、それぞれが膝や机をトコトコ叩いてみたり「ドンコドンコ・・ドンドン」など覚えたてのリズムを口ずさんでみたりと、やり始めていくと私たちもおもしろくなってきて、ますます当日の子どもたちの様子が楽しみになってきました。


荒馬踊り、いくよー!
 太鼓のリズムには、不思議な魅力がありました。ドン!ドン!ドドドドド・・・・ドン!太鼓の音にあわせてピョンピョン飛び跳ねる子が出てきました。いつもは隅っこが定位置のリョウちゃんも、思わず舞台に上がり先生の後ろについてピョンピョコ踊っているのです。

 「さぁ、みんなも踊ろう」「いくよー!」のかけ声に「あいよー!」の返事。子どもたちも荒馬を身にまとい、気持ちも盛り上がってきました。リーダーの呼びかけ「ラッセーラー ラッセーラー」に続いて、みんなは「ラッセー ラッセー ラッセーラー!」と返します。二つ跳びで太鼓の回りをまわりながら、しばらく踊って休憩。その休憩の間に、トラくんがやってきました。みんなの楽しそうな様子に誘われてやってきたのです。「仲間に入れてよ。」というように、ゆったりとした曲にのって登場です。体を大きく踊らせねり歩き、一人ひとりにごあいさつ。ちょっと怖がる子もいたけれど、トラくんのやさしいあいさつに、子どもたちもいつのまにか仲良しになりました。

 休憩が終わる頃、トラくんは退場します。それを見送る子どもたち。せっかく仲良くなったのに・・・また会いたいね。「みんなが踊るとまたトラさんも来てくれるかもしれないよ。」と誘い、またみんなで踊り始めます。もちろんトラくんは休憩の時にやってきました。


トラくんはどこから来る
 トラくんは、時にはギャラリーから華麗に登場しました。口から紙吹雪をまき散らし、体を踊らせ登場しました。しかし、ある時のことです。そばにくると嬉しそうに手を伸ばすタカちゃんですが、自分から探すのは難しいことがわかりました。できるだけ大きくみせるようにと演じてはみるのですが、「同じフロアに登場するとたくさん人がいて探せないのかもしれないよ。」との声。そこで、「それならスポットを使ってみようよ。」と、暗闇の中からスポットを浴びての登場となりました。
 またある時には、荒馬踊りをしながらトラくんを捜しに行く旅に出ました。途中いろいろな動物たちに出会い、「トラくん知らない?」と探していくのです。もちろん、出会いの感激はひとしおです。


新しいものを求めて
 時期を活かした夏の海の設定や冬の雪遊び、子どもたちの好きな遊びのくすぐりや追いかけっこを活かしたものなど、毎年アレンジも加えながら内容にも膨らみがでて、定番の遊びが拡がっていきました。これらの実践は、その年の状況にあわせてバランスやタイミングを考えながら、一年の中にとりいれてきました。しかし、そこで終わりにせず、「いいものがあれば取り入れちゃおう。」「何か新しいものはないか。」ということは、いつも頭の隅にあるのです。

 新年度になり、新しい仲間が加わるのは新しい題材の生まれるいいチャンスです。その人が得意なものを活かしたり、別の発想もまた生まれてくるものです。


やってみれば
 荒馬踊りはちょっとした工夫ややり方を変えていくことで、子どもたちに合う教材になっていくのだと感じた題材のひとつとなりました。体から湧き出る何かがありました。みんなが好きになったのも、そういうことなのではないかと思いました。太鼓の打ち方も自己流ではありますが、もちろん今では定番のひとつです。さらには、卒業生の発表の内容として、発展させて取り組むこともありました。太鼓を打ったり虎を演じたりと、卒業生にスポットを当てたものにアレンジをして取り組みました。

 新しいものへの挑戦は、苦労もあります。でも、そういう時こそ成功した時の喜びはひとしおです。きっと、もっともっと気づいていないおもしろいものがあるのだと思います。これからも、これまでのものはもちろん大切にしながら、新しいものをうまく取り入れてよりよい集会づくりを心がけたいと思っています。

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