第1部 はじめの一歩 | |||||||||||||||||||||||||
養護学校の教員になって | |||||||||||||||||||||||||
ある夏の日。Aさんが我が家にやってきて、今まで集めていた実践整理表をはさみで切ったりのりで貼り合わせたりして、クラスの実践についてまとめたのがこの「本」の始まりだ。 この実践整理表を基にして行なう学期ごとの話し合いは、子どもたちの成長がみえてとても楽しい会議であった。もっとも、楽しいと思えるようになるには時間もかかっていたかも知れない。 忘れられない光景の一つに離任式の日がある。その日は学部の恒例で、転勤した先生はジャ−ジに着替えて朝の体操に参加することになっていた。みんなが築山の回りを走り出したとき、自閉症のMちゃんの手をとって一直線に走りだし大きな背中、こぼれるようなMちゃんの笑顔。Mちゃんってあんなに楽しそうに笑うんだ・・・久しぶりに会うのにすごいな、転勤した先生の穴はあまりにも大きい・・・自分に何ができるのか。 結局、私は小さな図書室に置いてあった研修のまとめを読むことから始めた。15冊程の冊子の小高の記録だけを読むという乱暴な読み方の後、M先生からは5年間ぐらいの課題別学習の実践整理表を借りて内容を書き出していった。記録がいかに大事か、一通り読み終えた時に自分の居場所が少しわかった気がした。養護学校は、なかなかおもしろそうな所なのだ。 さて、この「本」について。 子どもたちがのった楽しい授業ができたとする。けれど、その手応えというのはその場にいた少数にしか共有できない。なにしろ教科書がないのだ。教材もほとんど手作りだ。照明や音響の効果を理解してもらうのも難しい面がある。けれど、例え不十分でもこうした冊子は持ち運びに便利だ。なによりも、転任した先で実践を継続したい時、回りからの理解を得るのに便利だ。養護学校の仕事はクラスを一人で見ている訳ではない。同僚との共通理解がどうしても必要になる。 転勤一年目で学部全体の理解を求めるのは荷が重いので、まずは実践をまとめだしたのである。 |
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